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閉館した 「InterMission 」より拾い集めましたものと 新しいものがあります。 カテゴリーを選択していただきますと、大項目が表示されます。 その中に複数の詩が納まっております。


by 春

Egoism


極度の運動機能の障害により

彼女は呼吸停止の危機と相成った

同じ頃 彼女の妹は 

姉と同じ病であることを告げられた


彼女の娘は覚悟する

自分もこのように閉じてゆくのだと


しかし娘は寂しさのあまりに手を出した

その延命装置は彼女の肺を開き

新しい酸素を送り込んだ


彼女の脳内にあった二酸化炭素は追い出され

彼女は娘の声に反応を示した


娘は嬉しかった

彼女が事の次第を認識したのなら

さぞ悲しかろうに


娘は自らが同じ所に立った時

静かに眠らせてほしいと願っているのに

母恋しさの気まぐれに

安らかな眠りを奪ってしまった
# by sakura-747 | 2009-10-06 23:17 |

日常の景色


日常の景色_d0145084_23522320.jpg


いつも最寄りのバス亭で、次のバスを待ちきれずに二つ先まで歩く。

その前に、蓋付きの飲み物をピザ屋の角の自動販売機で買う。

秋の声を聞き、秋の色を身に纏い、薄手のジャケットをそれぞれに羽織った。

ホットの缶珈琲にはまだ早いから、選んだのはグレープジュースと冷たい珈琲。

これで上着を脱がなくて済む。


こんなことをしていると、バスに抜かれて、結局目的地まで歩いてしまうかもねと、
笑いながら本当に抜かれてしまうことがある。

もう夕方だけれども、今日は時間があるらしいから、きっと現地でも歩くであろう。

予定調和の間抜けなバスとの駆け引きは、今日は止めて、計画通りに二つ先で乗り込んだ。


別に洒落た所に行くわけではない。

髭をチェックする為のどうでもいい鏡と、まさにどうでもいい台所のスポンジやら、
エスプレッソマシンの前に置く為の焦げ茶色のタオルを買いに、まずは100均に向かった。

フロア3階まで、何故だか見てしまう。

私とは全くかけ離れた家に生まれ育った彼は、人間国宝だかなんだかから貰ったらしい珈琲カップや、やっぱり何処ぞからの贈り物の値段は知りたくないカップをを安いキッチン棚に放置して、普段は自分が作ったカップや、私がフランフランで購入したものを使っている。

ただし、自作のカップはかなり立派。私とは違って器用だ。

そして、彼は此処100均に来る度に、食器の出来に感動する。

ど庶民を突っ走る私の人生と交差してしまったのは、彼のこの感性に起因するに違いない。

金額を掛けるものとそうでもないものがハッキリしているかと思えば、気に入れば、
100円のもお幾ら万円のも同じように愛してしまう。

お洒落は好きだが、スタイリッシュに生きられない。

ダメーな共通が心地良い。

100均アトラクション。無駄遣いしても二人で1000円ちょっと。

あまりにリーズナブルと、笑ってお店を後にした。



何だか昔を思い出す。

オレンジや赤のステーショナリーを見つけては、同時に手を出した。

別々の店で買い物をしたのに、サングラスの縁の色が被った。

「お揃い」が、とても嫌いな二人。

喧嘩にならなかったのは、まだお互いが遠かったから。

付き合い始めてからというもの、何か被ろうもんなら大変。

幾年の微妙な中距離なんちゃらを経て、暮らしを共にしてみれば、
もうそこから5年目に入っている。



さぁ、ディープな中野の商店街でパイプ屋を軽く冷やかす。

しかし、今日は、電子煙草を見たいと言う。

美味くもない紙巻きを加えながら、仕事のストレスを気化し続けることに、生産性の無さを感じた様子。

吸うなら、自宅での休憩時間に、美味いパイプを楽しみたいという。

手巻きを吸う私にも、その気持ちが良く解る。

口にするなら、美味しい方がいい。



商店街を抜ける前に、今日はラーメンでも食べて帰ろうと話した。

この地でラーメンと言った場合、店は福島の白河ラーメンと決まっている。

鶏ガラとゲンコツと野菜で取った、優しい味のスープ。

塩も醤油もあるが、ここは、やっぱり醤油を選択してしまう。

味噌汁に使う味噌の好みとラーメンの好みは幸いにして共通。



ご飯の炊き具合は、私が譲った。

西の人間に育てられたので、本当はモッチリふっくらが好きだが、坂東の武士には硬いご飯。

まぁ、よかろう。



ホームセンターに向かう道すがら、たこ焼き器を買ってみようという話になった。

魚介類アレルギーの彼には、ベーコン&チーズ焼・・・あたりがメジャーになってくれると大変有り難い。

が、そんなものは存在しないので、家で作ればいいだろうということになった。

私は母親がガステーブルに載せる鉄板タイプのたこ焼き器で作ってくれていたが、
何時しか母親の興味はお好み焼きに走り、たこ焼きは我が家の食卓に上らなくなった。

なので、私は作ったことがない。

しらないぞぉ。。

まぁいい、どうにかなるだろう。



たこ焼き機の前に、とりあえず電子煙草という大目的物を探した。

あっさり見つかった。

やたらお値打ちな時計やら電卓やらの、お父さんの匂いのするエリアを探したら出てきた。

なるほど。カートリッジは二種類。メンソールかノーマルか選べるらしい。

見た目も悪くない。気を良くしてあっさり購入決定。



そして赤い台座の電気式のたこ焼器1100円という安さに半信半疑になりつつ、買い物カートに投入。

続いてプリンターの用紙・蛍光灯など、結構な重さになった。

流石に100均の荷物は軽いが嵩む。

二人で手分けして持って帰るが、一番重いのは「紙」というのがすごい。

こういった面からも、企業が紙媒体をなくしたいのが解る。



日はどっぷり暮れて、紛れもなく夜だが、荷物を持って歩くと流石に暑い。

彼はジャケットを脱いだ。

誕生日に贈った秋の柄のTシャツを見えるように着たいというので、丁度良かった。

男の子を産むと、こういうところが可愛いくて嬉しいと、世のお母さん方がいう話を思い出した。

なるほど。



ラーメンの前に喫茶店で一服。

さっき手に入れた例のブツを、早速試した。

妙にワクワクしながら彼が組み立てるのをじっと見つめて待った。

そして、えっと、二人とも驚いた。

息を吐くと、煙が出るのだ。吸えば赤く点灯するし、玩具とは言い難い出来である。

世の中頭の良い人がいるものだ。煙はただの水蒸気。

あまり興味が無いが、エコだのぉ~~~と、二人感心仕切りであった。


気を良くして中野のラーメン屋に向かい、私は焼豚ラーメンを、彼は普通のラーメンの大盛を食べた。

目的を全て達成し、あとは帰るだけ。ブロードウェイ脇からバスに乗ろうということになった。

別の便に並ぶ人を避け、脇に立っていたら、あろうことか見過ごされ、本命に乗ることが出来なかった。

炭水化物を得て、意外と元気な彼は歩こうと言った。

私は、それを心の底から待っていた。


メインストリートから脇道に入り、ゆっくり話しながら家まで歩くと、わりといい距離だが、
疲れる距離ではない。

ある企業の立上に携わって1年以上経過したが、初めて半日分の時間を休暇として申請したそうだ。

帰ればまた仕事が待っている。偶にはゆっくり生活を楽しみたかったのだろう。

道すがら、たあいもない話で私をずっと笑わせていた。

もともと会話に於けるサービス精神は旺盛だが、本当に道中が短かった。


公園から聞こえていた野球の夜間練習の声ももう消えていた。

さぁ、お家へ帰ろう。
# by sakura-747 | 2009-09-15 23:02 | 散文

一人称



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オレ・ 僕 ・ 私

慣れて少し話せるようになり

気持ちが打ち解けて信頼感を持ち始め

甘えん坊が雲の陰から顔を覗かせた


そして今日

君は大人の顔をして旅立っていった


卒業 おめでとう
# by sakura-747 | 2009-08-27 09:21 |

阿佐ヶ谷

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とうとう行かなかった神社の傍らにある店は、イタリアンから中華に変わっていた。

荻窪から天沼を抜け、阿佐ヶ谷北3丁目へ、遊歩道を踏みしめた。

人が長く住んできた温もりが、独り歩きを寂しくさせない。

時折涼みに出て来た猫に話し掛け、童心にすら返る。

アカシアの樹を見つけた。

春に花をつけた姿は、まるで異国の庭の香りを漂わせるのだろう。

ヒールの踵が擦れて、コツコツと地面を叩く。

外苑通りならば、恥ずかしくて、直ぐにタクシーを止めるだろう。

しかし、此処ではズボラを許してしまう。

修理は明後日、夏休み初日にすればいい。

散歩の続きを楽しんだ。

さして自分達を都会人とは思わぬ、飾らないこの街を歩いた時、
初めて私は東京を好きになり、東京のひとになっていくことを快く受け入れた。

旧中杉通りに出た。
此処から阿佐ヶ谷駅に向かう。

センスの良さを感じさせる店がまた増えていた。

いつ通っても飽きが来ない。

夜に向かう阿佐ヶ谷は、夫婦も恋人同士も友達同士も、楽しそうに会話して歩く。

「あれ、此処にこんな店あったっけ?」
「うん、あったよ!」

微笑ましい。


今日は浴衣姿が多い。パールセンターの七夕祭だからだ。

さぞ駅前は賑やかだろう。

わくわくしてきた。

駅前北口のアーケードにあった有名なラーメン屋の一号店が消えていた。

時は流れたのである。

南口に出た。

祭りの熱気がアーケードから街に注がれていた。

昼は欅並木に癒やされる。

夜は店の面構えにぐっと引き寄せられる。

浴衣姿の男女が手を軽く握っていた。


久しぶりに羨ましいと思った。

もう久しく、そんな光景に二人溶け込んではいない。

土砂降りの鬼子母神が懐かしい。

あの頃の私の年齢を追い越した君は、それでもまだ若い。

私の無駄な抵抗もあと10年だろう。

最後はそんな諦めを受け入れて、仕事漬けの君の待つ我が家に戻る
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# by sakura-747 | 2009-08-12 00:04 | 散文

謳う5

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                 空仰ぐ 君の眼差し遠すぎる 

                 添えぬつらさを 風にあずけたり
 
# by sakura-747 | 2009-07-05 10:26 |